角田公正・審査委員長が講評(1999年7月16日、毎日新聞)
表彰式
第48回全国農業コンクール全国大会の表彰式で、中央審査委員会委員長の角田公正・東京大名誉教授は次のように講評した。
耕作放棄、遊休農地の増大
私なりに感じた点をお話ししたい。1つは耕地利用の集積。借地や作業受託による規模拡大が見られた。(日本の農業は)耕作放棄や遊休農地の増大が大きな問題となっている。さらにほとんどが1年1作で、耕地の利用率が低い原因ともなっている。今回は、2年5作、250%の高い利用率を実現している発表があり、印象に残った。作られる作物は換金作物に限らない。休耕田に花を植える景観作物など、それぞれの役割と効用を持っている。年間を通じて作物で覆われているようにすることが大切だ。
家族経営から法人経営
2番目は法人化の進展。今回の発表では、法人経営が約半数を占めた。中でも有限会社が一番多く、一部には協同的な形態も見られた。それまでの家族経営から脱皮して高い収益を上げており、経営者としての高い経営能力を推し量ることができた。
郷土料理の開発や直販
第3が付加価値の問題。近年の産業としての農業の伸びは著しく、国内生産額100兆円の大産業に成長した。だが、そのうち加工生産、流通、販売がほとんどを占め、農業そのものは1割そこそこしかない。原材料の生産ばかりでなく、加工や流通など業務の幅を積極的に広げている姿は付加価値化という言葉にかえてもいい。例えば郷土料理の開発や直販などだ。たくましい女性パワー、貴重な高齢者の役割が地域農業の大きな活力源となっている姿がうかがえた。
農業の発展
今回発表された実績が点としてではなく、さらに面として広げてもらい、わが国農業の発展に資することを願ってやまない。